忍者ブログ
〓 Admin 〓
<< 11   2025 / 12   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31     01 >>
[259]  [258]  [257]  [256]  [255]  [254
リニアステッピングモータは、回転型ステッピングモータと同様に「パルス信号」に同期して位置を変化させるモータですが、出力が直線運動になっている点が特徴です。
回転型ステッピングモータ
→ 回転角をステップ単位で制御
リニアステッピングモータ
→ ステップごとに一定距離だけ直線移動
エンコーダを用いなくてもオープンループで位置決めがしやすく、構造も比較的シンプルなため、搬送装置・精密位置決め機構・検査装置などで広く利用されています。
2.基本的な駆動原理
リニアステッピングモータは、固定子側(ステータ)と可動子側(ムーバ、テーブルなど)に磁極パターンを持ち、コイルに通電する位相を切り替えることで磁極を順次移動させ、直線運動を得る構造になっています。
コイルに電流を流す
→ 磁界が発生し、永久磁石または磁性体と吸引・反発力が生じる
通電する相(A相、B相…)を順番に切り替え
→ 吸引位置が少しずつ移動し、それに合わせて可動子が直線的に動く
この「通電パターンの切り替え」をどのように行うかが、駆動方法の違いになります。
3.リニアステッピングモータの主な駆動方法
3-1.フルステップ駆動
もっとも基本的な駆動方式です。
2相励磁(例:A相+B相 → A’相+B相 → A’相+B’相…)で駆動します。
各ステップごとに進む距離は一定で、**カタログに記載された「基本ステップピッチ」**がそのまま位置分解能になります。
特徴:
駆動が単純で制御が容易
トルクが比較的大きい
反面、振動・騒音が大きくなりやすい
高いトルクを優先し、分解能よりもシンプルさが重視される用途に向いています。
3-2.ハーフステップ駆動
フルステップと比較して、位置分解能を2倍に高めるための駆動方式です。
1相励磁と2相励磁を交互に行うことで、基本ステップの中間位置にも駆動点を作り出します。
その結果、1ステップあたりの移動量が半分になります。
特徴:
フルステップよりも滑らかな動き
分解能が2倍になる
一部のステップではトルクが低下する
フルステップでは分解能が不足するときに検討されます。
3-3.マイクロステップ駆動
さらに滑らかな動きや高分解能が必要な場合には、マイクロステップ駆動を用います。
A相・B相などの励磁電流を「正弦波状」に近い形で細かく制御し、磁界の合成ベクトルの向きを連続的に変化させます。
1フルステップを、8分割・16分割・32分割などに細かく分けて駆動することが可能です。
特徴:
極めて滑らかな移動が得られる
低速での振動や共振を抑えやすい
高分解能の位置決めが可能
ドライバがやや高価・制御が複雑
精密な位置制御や、低振動が求められる装置によく用いられます。
3-4.クローズドループ駆動(位置フィードバック併用)
リニアエンコーダなどの位置センサと組み合わせて、クローズドループ制御を行う駆動方法もあります。
基本はステッピングモータとしてパルス指令で動かす
実際の位置をエンコーダで計測し、「脱調」や位置ずれを検知・補正
特徴:
サーボモータに近い安定した位置決め性能
過負荷時でも脱調を検知できる
制御系がやや複雑になる
オープンループのシンプルさを生かしつつ、信頼性を高めたい場合に検討されます。
4.駆動時の注意点
4-1.脱調(ステップアウト)に注意
ステッピングモータは「パルス=ステップ数」として位置を計算するため、脱調が起きると位置情報が一気に崩れます。
脱調を防ぐためには、
必要な推力・負荷質量に対して十分なトルクを持つモータを選定する
加速・減速のプロファイル(ラムプ)を適切に設定する
急激な速度変更や過大な外力を避ける
といった配慮が必要です。
4-2.共振・振動への対策
ステッピングモータは、特定の速度域で機械的・電気的共振を起こしやすく、振動や騒音、トルク低下の原因となります。
対策としては、
マイクロステップ駆動で滑らかな励磁を行う
問題となる共振速度域を避けて速度設定を行う
機械側にダンパや適切な剛性設計を取り入れる
などが挙げられます。
4-3.発熱と温度上昇
リニアステッピングモータは、通電状態が続くことでコイルや磁石の発熱が生じます。
高温になりすぎると、絶縁劣化や磁力低下につながる
周囲の機器やワークへの熱影響も考慮が必要
そのため、
ドライバの電流設定を適正値にする
必要以上の保持トルクが不要なときは電流を下げる(ホールド電流の低減)
放熱設計(ヒートシンク、取り付け面の熱伝導など)を適切に行う
といった対策が重要です。
4-4.直線ガイド・機構側の精度と摩耗
リニアステッピングモータの性能を十分に活かすためには、直線ガイドや機構側の精度・剛性も重要です。
ガイドの直進性や平行度が悪い
摩擦が大きい・局所的に噛み込みが発生する
といった条件では、必要トルクが増加し、脱調や位置ずれの原因になります。定期的な潤滑やガイド調整、摩耗部品の交換など、機構側のメンテナンスも含めて考える必要があります。
4-5.原点復帰と位置管理
オープンループで使用する場合、電源投入直後は絶対位置が不明です。そのため、
原点センサ(リミットスイッチ、近接センサ、光学センサなど)を用いた原点復帰
必要に応じて、定期的な原点再取得
を行うことで、位置の信頼性を維持します。
クローズドループ方式を採用する場合でも、初期原点合わせは重要です。
5.選定と運用のポイント
リニアステッピングモータをうまく活用するためには、以下の点を意識して選定・運用するとよいです。
必要な推力・ストローク・分解能を明確にする
→ その上で、フルステップ/マイクロステップ、オープン/クローズドループを検討します。
負荷条件・速度プロファイルを考慮する
→ 加減速を含めたトルク・推力余裕をもってモータを選びます。
機構設計と合わせて評価する
→ 直線ガイド、摺動部、取り付け剛性なども一体で検討します。
発熱・共振への対策を事前に想定する
→ 仕様の段階から、電流設定や放熱、速度域の調整を計画しておきます。
6.まとめ
リニアステッピングモータは、パルス信号で簡単に位置制御が行え、直線駆動機構をシンプルに構成できる優れたアクチュエータです。一方で、脱調・共振・発熱・機構側の摩擦といった点に注意しなければ、本来の性能を発揮できません。
フルステップ/ハーフステップ/マイクロステップなどの駆動方法
オープンループ/クローズドループの制御方式
機構全体を含めたトルク余裕と放熱設計
をバランスよく検討し、実機評価を通じて最適な条件を見つけていくことが、安定したリニア駆動システム構築の鍵となります。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (管理人しか読むことができません)
プロフィール
HN:
No Name Ninja
性別:
非公開
P R
Copyright(c) skysmotor All Rights Reserved.* Powered by NinjaBlog
* photo by 空色地図 * material by egg*station *Template by tsukika
忍者ブログ [PR]